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どぶろくの日(10月26日)に知りたい!作り方から起源まで

2020/10/26

最終更新日:2023/02/23

突然ですが皆さん、“どぶろく”という言葉はご存知でしょうか?

可愛さからはほど遠いところにあるような響きのこの言葉。どろどろした見た目のお酒のことを指します。とろとろとした見た目はちょっと可愛いかも…?

どぶろく

 

  1. どぶろくは「日本酒」の原型
  2. 各家で育まれていたどぶろく文化
  3. ハレの日の日本酒。ケの日のどぶろく

  

1.どぶろくは「日本酒」の原型

実はこのどぶろくというのは「日本酒」の原型にあるようなお酒です。ざっくり説明すると、「米、米麹、水」を一緒に発酵させたままの“ドロドロのお酒”がどぶろく、そしてそのどぶろくを“濾したもの”が日本酒。ちなみに濾した結果分離されたものが酒粕です。

つまり、どぶろくというのは日本酒の前段階、あるいは起源ともいえるようなお酒なのです。それと同時に日本酒があんなに透明なのにお米からできている、というのも納得がいったのではないでしょうか。また日本酒の起源にも諸説ありますが、どぶろく状のお酒に炭を撒いたら上澄みが出来上がって、それがあまりに美味だった、という説もあります。

上槽
どぶろくを濾す工程=上槽の様子。小分けにして袋にいれて、布の繊維を利用して濾してゆき透明なお酒に仕上げていきます。

 

2.各家で育まれていたどぶろく文化

さて、実はどぶろくは昔は各家で造られていました
もともとは儀式・神事にも使われ、新嘗祭のように豊穣を祝っていたとも云われます。その後は技術が発達していくにつれてお祭りなど、特別な日(いわゆるハレの日ですね)のお酒として日本酒が活躍していたと推測されます。
つい明治時代あたりまでは、日常のお酒は自分たちが造るというのが多かったようです。特に農家のお酒として根付いたどぶろくは、近所の中でも「ここの家のお酒が美味しい!」と話の種になっていたともいいます。
今でもこのどぶろくを造っていた風習を残そうと「どぶろく特区」が制定され、昔ながらの家単位でのお酒造りをされているところもございます。

そんなどぶろく文化は先の大戦とともに失われていきます。簡単にいうと軍事費のため酒税をまかなうために自家醸造を禁止し、政府が税金を管理できる既存の酒蔵のみがお酒を造れるようにしたのです。
たしかに、各家でお酒を造っていたら、わざわざ日本酒を買う必要がなくなってしまうと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、個人的には家で造っていたどぶろくがあったからこそ、プロの造る日本酒の良さがより分かったのではないかと思うのです。普段は家で料理を作るが、たまには外で美味しい料理を食べたい、というような感覚に近いと考えます。

 

3.ハレの日の日本酒。ケの日のどぶろく

ここから私感になりますが、現代の食は特別な日のものをいかに多くの人が食べれるか、また様々な知見を活かしながらより新しい特別なものを生み出すかについては、多くの成功を収めているように感じます。特に日本の場合は食材がとても新鮮な状態で食べられるところも多いし、技術をもった飲食店も多いのではないでしょうか。
あるいは日本酒について考えてみると、まだ50年前には米も存分に磨くことが叶わなかった時代でしたが、今では大吟醸酒も当たり前に手に入るようになりました。極限まで磨いたお米と優れた醸造技術によって綺麗で素晴らしいお酒も誕生しています。しかし特別な日(=ハレの日)というのは常に日常(=ケの日)とともにありました。
ハレの日のものがより良いものとなり、当たり前に手に入る一方、ケの日のものをいかに現代に適応させていくかについても、重要な課題であるように思います。そういうように考えるのは、一つ社会の成熟がそうさせているのかもしれません。経済的な成長、華やかなものよりも持続可能なものを重視するような所謂「ミレニアル世代」にも象徴される考えとも言えます。

さて話を戻すと、どぶろくは新しい日常酒になる可能性を大いに秘めていると考えます。
味わいも「綺麗」から「滋味深い」へ。「頭が喜ぶ」から「身体が喜ぶ」価値観へ。
また逆に日常があるからこそ、特別なものの良さもより理解される期待もできます。どぶろくは日本酒になる前の、酒粕と分離されていない状態のお酒です。なのでアミノ酸がたっぷり入っていて飲みごたえもあり、酸味も感じられます。その点で幅広い料理と合わせることができ、まさにこの点でも日常で飲むのに適したお酒といえます。

また造り手側にもメリットがあります。
上槽という”濾す”工程を持たないため①酒粕が減らない分お酒の量も確保でき②工程の1つ減ることでコストが削減されるという2点が主に挙げられます。酒粕が出ないことで、無駄になるものが出ないのも魅力です。またどぶろくは税制上「その他の醸造酒」に分類されるため、「清酒」免許に比べ取得しやすく、また最低製造数量も少ないので新規参入が比較的容易です。今後どぶろくの造り手が増えていけば、新たな地酒文化が醸成されるやもしれません。

様々な造り手がそれぞれのこだわりを持って造ったどぶろくが各地にある世の中って、なんだかワクワクしてきませんか?


さて、そんな新しいどぶろくの魅力をシンプルに伝える商品がこちら。
三軒茶屋のどぶろく

三軒茶屋のどぶろく
WAKAZE創業の地・山形の米を三軒茶屋の井戸水で受け入れ、発酵させたどぶろく。クエン酸を生成する「白麹」を用いることで甘酸っぱく飲みやすいどぶろくに仕上がりながら、ラベル表示義務のない添加物を使用しない”無添加”の造りを実現することができました。味わいもしっかり感じながら、綺麗に余韻を残して身体に馴染む、飲みやすいどぶろくです。少量生産でありながらギリギリの価格を設定し、皆様の手元にも届けやすいどぶろくへ。毎回新しいレシピに挑戦する三軒茶屋醸造所では、唯一の定番商品となります。

 

 

text by Toda
WAKAZE三軒茶屋醸造所2代目杜氏
2018年9月 東京工業大学在学中に、三軒茶屋醸造所立ち上げ直後から蔵人として杜氏 今井翔也に師事。同年冬には千葉・木戸泉酒造と群馬・土田酒造にて修行し、伝統と自然製法に回帰しながらも革新的な酒造りを行う最前線に触れる。2019年6月 大学を休学し、WAKAZE入社。同年9月の今井渡仏にあわせて三軒茶屋醸造所での酒造業務を任され、数多くの新技術を生み出す。2020年4月より、三軒茶屋醸造所杜氏として指揮をとる。
Twitter:@toda_wkz

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