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東京どぶろくサミット 後編(東京港醸造/木花之醸造所/三軒茶屋醸造所)

2020/11/09

最終更新日:2020/11/30

11月4日公開の前編に引き続き、都内3醸造所が語り合う初めての試み「10月26日どぶろくサミット」をご紹介します!

寺澤善実さん(東京港醸造 杜氏)、岡住修兵さん(木花之醸造所 醸造長)、戸田京介(WAKAZE三軒茶屋醸造所)の3名にお集まりいただき、それぞれの造るどぶろく、今後の日本酒&どぶろく業界への想いを語っていただきました。 

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<目次>
1.醸造所、それぞれの造り(前編)
2.目指す味わい(前編)

3.どぶろくならではの工夫
4.これからの想い

 三軒茶屋醸造所 どぶろくサミット

3.どぶろくならではの工夫

お米のつぶつぶ感が3蔵で異なりますよね

戸田:それでいうと僕はまんなかですね!

そうそう、寺澤さんがさらっと、岡住さんがいちばん粒が残っていますよね。これは造りによるこだわりでしょうか?

岡住:90%精米なのでお米が溶けるのに限界があるんです。ただ、つぶつぶが残りすぎると、飲み物か食べ物か!みたいになっちゃうので頑張って溶かすようにしていますね。

また、添加物を使わない「無添加の造り」を大事にしているので、調整剤ではなく、麹の力で溶かすように工夫しています。
麹造りでは、種麹の選定と麹歩合にこだわっていて、一般的には麹歩合は20%くらいだけど、僕のところでは麹歩合35%くらいで造ることで、味も濃く仕上げています。

さらっとしているどぶろくの寺澤さん。こちらは溶けるように設計されているんですか?

寺澤:舌触りを意識して、溶かしたうえで細かく粉砕しています。最後まで同じ濃度で飲んで頂くためにはどうしたらいいかを考えました。粉砕の仕方はさっき2人にも聞かれたのですが、企業秘密です!笑

どぶろく 火入れ

酵母や酵素の働きを止める火入れ作業。(写真は三軒茶屋醸造所)

 

配信でもコメントを頂いています!造り手さんからの質問のようです。「どぶろくの火入れのよいやり方を教えてください」今回のどぶろくは、皆さん火入れをしているのでしたっけ

戸田:今回のは特別に生酒ですが、通常は火入れで提供しています。

さきほどから話を伺っていると、どぶろくは含まれている成分も多いように思うのですが、普通の日本酒よりも品質の変化は早いのでしょうか

3杜氏:うなずく

なるほど、そうなると火入れのどぶろくのほうが造り手さんにとってはいいですか?

寺澤:安全ですね!

岡住:生なら生の風味の良さもあるが、どぶろくは火入れ前後の差も顕著なんですよ。火入れすることによって糖化して、甘くなっちゃう。それを計算したうえで火入れをしているので、日本酒よりもハードルが高いですね。

寺澤:テクニックですよね。お2人もかなり頑張っていろんなパターンを試したと思います。

戸田:ほんとに納得で、絶対に悩むポイント

岡住:いまだに僕も悩んでいるし、将来にわたっても悩み続けると思います。

なるほど、難しく試行錯誤が必要かと思いますが、端的に答えると寺澤さんなんてお応えしたらいいでしょうか?

寺澤:2つの軸で考えるとよいと思います。酵母/酵素が失活する温度帯をひとつの軸と考えて、どこまでいくと熱変性で酒質が変化するかの間の条件を探る。

あとは維持する時間。瓶は外から熱伝導して、真ん中は温まるのが遅い。どのタイミングでボトルを攪拌するかなども大事です。

戸田:醤油でも「一麹、ニ櫂、三火入れ」と呼ばれるくらい醤油でも火入れが大事ですよね。どぶろくもそう言われるようになるかも!

他にもコメントいただいています。「さっぱりしたどぶろくが好きです」旨味を追いかけると、さっぱりしているところは追うのは難しいですか?WAKAZEさん木花之醸造所さんは酸を大事にしているということでしたけども

岡住:そもそもやっぱり発酵を綺麗にすることが前提として大事で、それに付随して甘み酸味をのせることで、飲みやすさを演出するように造っています。発酵が崩れると飲みにくくなってしまうんですよね。

「ぜんぶ美味しいです」というコメントも頂いてますね。10月26日という日を機会に飲む人が増えているかもしれないですね。

 どぶろく

4.これからの想い

お時間がまわってきてしまいました、最後にこれからのビジョンや想いの部分をお聞かせください!

戸田:三軒茶屋醸造所では、金木犀、フルーツ、ラムレーズンなどを加えることでどぶろくの可能性、日本酒の可能性に挑戦している。どんどん新しいレシピを生み出しているのが三軒茶屋醸造所の特徴の1つです。

どぶろくの可能性を広げていきたいと考えています。名前も4文字中2文字濁音で可愛くない。けど、金木犀の要素が入るだけで親しみを持っていただけている。

同時にどぶろくについて思うのは「何気ないお酒であっていい」ということです。ブルーベリーサワーを飲む感覚でブルーベリーどぶろくを飲んでほしい。日常酒に、地酒としてどぶろくが入ってほしい。

岡住さんが醸造所を立ち上げて、東京駅にも立ち上がって、新しいムーブメントが起こっている中で、どぶろくは比較的新規参入もしやすいと思います。
そこで新たなプレイヤーが増えて、地元でそれぞれのお米やお水をつかったどぶろくが飲める世界は最高ですよね。

どぶろくは日本酒とちがう価値観でよいと感じています。
日本酒はそもそも特別な日の清らかなお酒だったが、今は日常酒として広まっている。どぶろくも、もともと農家さんの家で造られていたことからも、より日常に近いものとしての価値観を伝えていきたいです。

WAKAZEのビジョン「日本酒を世界酒に」にもあるとおり、世界に向けて発信をしていきたい。日本で盛り上げる中でのキーワードとして「どぶろく」を使っていきたいです。

こんなどぶろく造りたい!はありますか?

戸田:いろいろありますが、1個大きな醸造テーマとして絶対やりたいなっていうのは玄米

どぶろくは、甘さを残すためにぎゅーっと発酵を抑えて醸造管理をしている。それは、放っておくと酵母が糖を食べちゃうから。
これって栄養過多な状態なのだとしたら、もっと硬い米のほうがいいんじゃないか?と考えています。玄米は磨かない米、サスティナブルの観点からも取り組んでみたいですね。

三軒茶屋醸造所から玄米どぶろくでるのが楽しみですね!

岡住:醸造所の未来としては、東京浅草にあるので、できるだけ東京浅草の人に楽しんでほしいですね。販路も近隣を中心にしています。

地方の方たちの中には、酒蔵が地元にあることが誇りであるように、東京の人にとっても酒蔵があることを誇りに思える、地元に愛される醸造所を目指したいですね。

じつは僕は木花之醸造所は来年2021年2月までの契約で、その後は独立して秋田県の男鹿市に自分の醸造所を持つために動いています。

なので、2月以降は僕のような独立心のある若い醸造家に醸造長になっていただいて、同じように独立して地方で醸造所や酒蔵を立ち上げてほしい。木花之醸造所は、若い醸造家を育てるスペースとして機能したいですね。

そうして10年20年経ったときには、浅草の醸造所をスタートとした酒蔵が日本中に立ち上がっていてほしい。いまの範囲ではどぶろくしか造れないですが、それが日本酒!になったときには日本酒業界全体の盛り上がりに繋がりますよね。

将来的には、今ある新規参入規制が業界にも受け入れられる形で緩和する方法がないか探っている状態です。

若い方が熱意をもって業界に飛び込んでくれるのはいい話ですね。こうしたところから、より多くの方に和酒が飲まれるようになる

岡住:いまの20代の若い子達すっごく面白くて、戸田さん含めて面白い方が日本酒業界に興味をもってくれている。そういう方たちの未来をつくりたい。

若い力を隣からひしひしと感じながら、寺澤さんはいかがですか。

<寺澤>逆に、42年の歴史の寺澤です!笑 42年間お酒に携わって、こういったお2人のような若い力は、発酵食全体を盛り上げになると感じています。

お味噌やお醤油など、世界遺産の日本食の基軸は発酵が担っている。そのなかでも、どうしても麹がネックになっていた。膨大な敷地の広いところで造るのがだいたいの蔵だったんですよね。
そこで、小さい冷蔵庫サイズで麹をつくる技術をつくり、特許をこの9月に取得しました。小さく造れることで、ご家庭でも味噌醤油など免許がいらない発酵から関わっていただく。どぶろく、いずれは日本酒に行かれては!が42年のキャリアの私からのアドバイスです。

もしこれを聞いているなかで「そんなことをしたら今の自分の酒蔵が侵されるんじゃないか」という方もいらっしゃると思います。免許があるのだから、その方が小さい酒蔵を街の中に造られたらいいんです。
なので、新規参入の話は既存の方をいじめているのではなくて、皆いっしょに盛り上げようよ!と言っているだけです。今後の日本酒業界に必要なことだと考えています。

未来に可能性を感じるワクワクする話をありがとうございました。

どぶろくサミット

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