お米とブルーベリーの意外な組み合わせ「三軒茶屋のどぶろく〜Blueberry〜」
2021/01/08
三軒茶屋醸造所 杜氏の戸田です。
今回は最新のどぶろくとなる、ブルーベリーを使ったどぶろくについてのお話です。
1.日本初のブルーベリー栽培地「東京都小平市」
2.米とアントシアニンの意外なハーモニー
1.日本初のブルーベリー栽培地「東京都小平市」
まずはブルーベリーについてみていきましょう。
ブルーベリーはそもそも北米発祥の植物。
先住民にとっては昔から馴染みある植物で、厳しい自然とともに生きるには欠かせない自然の恵みでした。
コロンブスを皮切りにヨーロッパからの移住民がやってきた際も、先住民からブルーベリーのスープやジャムを分け与えてもらうことで慣れない環境を乗り切り、その後栽培化したと云われるほどです。(移住民が持ってきたヨーロッパで栽培していた植物は、実際にアメリカの土地で育たなかった、といったことは非常に多かったのです。)
今でもブルーベリーというと鮮やかな色味や、ジャム・お菓子などの加工品としての風味に目がいきがちですが、実はスープやシチューにしても食べられていたりと、昔から人々の生活に馴染みの深い果実でした。
実際に、目に良いとされる「アントシアニン」を始め、ビタミン等の栄養豊富な果実として知られています。
あの小さな果実にそんなに魅力が詰まっていたとは、まさに驚きです。
そんなブルーベリーの魅力を日本にも伝えるために奮闘した「ブルーベリーの父」ともいわれる人物がいます。
東京農工大学の教授である岩垣駿夫氏は、彼の教え子とともに日本で最初のブルーベリー栽培園を東京・小平市に開き、その研究を続けました。
その後も多くのブルーベリー研究者及び実際栽培家を育てられ、その影響の大きさは計り知れません。
そして今回どぶろくに使用したブルーベリーは、日本で初めてのブルーベリー園となった「島村ブルーベリー園」から直送いただいています。
以前に別のお酒でブルーベリーを使用した際に実際に栽培されている地へ伺い、いくつもの品種を試させていただきました。(ちなみにそのお酒は2020年8月に生まれた"Fonia flower ~violet~"でした)
今回は、ブルーベリーどぶろく用に「ホームベル」という品種を選びました。甘さが際立ちながらもとても味わい深く、ジャムにも使われるような品種を使用することで、より香りも良くブルーベリーの魅力が詰まったどぶろくとなりました。
東京・三軒茶屋醸造所の井戸水で醸すどぶろくで、同じ東京産の素材を使えることはとても意義あることだと思っています。前回の東京・檜原村の黒茶のお酒"FONIA tea ~smoky~"に引き続き、同じエリアのものを醸すことを今後も広げていけたらと考えています。
2.米とアントシアニンの意外なハーモニー
また改めてどぶろくで使う意味を考えてみると、まずは米とアントシアニンは意外と相性が良いように感じています。
例えば古代米である赤米はその外皮にアントシアニンを多く含みます。また、赤飯も小豆に含まれるアントシアニンが溶け出ているのではと想像できます。
米×果実という組み合わせの中でも「アントシアニン」をフックにすることでうまく味わいを一体化させることができると考えました。
アントシアニン自体は多くの果実や植物素材が持つ化合物です。
今回のどぶろくを活かして、味わいの設計や、あるいは赤米などの特殊なお米を使う際の試金石的な存在にもなるだろうと思っています。
また今回はそれだけでなく、白麹の使用量も増やすことで酸味を強調し、ブルーベリーのもつ酸味との同調も図ることで、より米とブルーベリーが渾然一体としたどぶろくに仕上げました。
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Text by TODA
WAKAZE三軒茶屋醸造所2代目杜氏。
埼玉県戸田市出身。名字と出身地が同じという稀有な人材。肩書の長さには自信がある。会うたびに髪が長くなっているとの噂があり、社内でも髪型の方向性がわからないという声が度々上がる。酒造履歴としては、三軒茶屋醸造所立ち上げ直後から蔵人として杜氏 今井翔也に師事。同年冬には千葉・木戸泉酒造と群馬・土田酒造にて修行し、翌年9月の今井渡仏にあわせて三軒茶屋醸造所での酒造業務を任される。2020年4月より、三軒茶屋醸造所杜氏として指揮をとる。