海の向こうの造り手から見た日本酒の日 / World Sake Day

海の向こうの造り手から見た日本酒の日 / World Sake Day

2021/10/01

最終更新日:2021/10/27

こんにちは、WAKAZEの造り手 今井翔也です。

 「日本酒を世界酒に」を志すWAKAZEにとって、毎年10月1日の「日本酒の日」は、日本国内にとどまらない《世界酒の日 = World Sake Day》として捉えるべき節目です。
日本全国で同時乾杯するこの日が、もし世界同時にSAKEで乾杯する日になったら…と思いを馳せる方もきっといらっしゃるはずです。

日本とフランスで海を越え、SAKEの定義拡張を目指すWAKAZEの製造責任者である立場から、“日本酒の日”を迎える意味を捉え直してみました。

SAKEを取り巻く一年の流れ、米を中心としたものづくりからどう世界の文化へ繋がるのか、これを読む皆さんに造り手の視点の一端をお伝えいたします。

 

1. WORLD SAKE DAY

日本酒という枠組みを超えて、SAKEはいま世界中で造られ、愛される文化へと急成長を遂げようとしています。

その《CRAFT SAKE革命》を先導する造り手集団(=酒屋若勢、東北の言葉で「若手蔵人」の意味)でありたいと願い、2016年に創業したのがWAKAZEです。

10月1日は、「米という穀物から酒を造る決意を、新たにする日」と捉えています。この時期は、稲の収穫の季節として新米が各地へと運ばれることで、田んぼから蔵へとバトンが渡されます。
これはフランスも例外ではありません。米という穀物を、主食としてでなく、宴や祭事のための酒へと醸すことを志す分岐点。それこそが「SAKE DAY」の意味なのではと思います。

フランス カマルグ地方の田んぼ

夏の田から、冬の蔵へ。何より、その先の食卓へ。

#日本酒の日 #WorldSakeDay と検索したときに溢れる乾杯の笑顔。
大きな一年を始めるにあたり、造り手にとって大きな喜びをいただける日です。
みなさんにその気がなく、単純にお酒を楽しんでいるだけとしても、造り手にとってはかけがえのない一瞬です。そのために頑張れるということを、感謝と共に改めて伝えたいです。

食卓から造り手へ向けての笑顔、一方通行でなく価値連鎖が一巡する節目、心を一新して酒造りに向かう瞬間としての「SAKE DAY」。
その循環を、日本を飛び出し世界に向けて拡張していきます。


2. MASTERED IN JAPAN, MADE IN FRANCE

東京・三軒茶屋醸造所が創立3周年、パリ郊外・KURA GRAND PARIS(クラ・グラン・パリ)がもうすぐ2周年。

COVID-19の影響からようやく食業界が立ち直りつつある今、SAKEの果たす役割は再び重要になってくると信じています。
フランスでは、人々の移動量はロックダウン(都市封鎖)以前の活気を取り戻しており、個人のお客様のみならずプロのお客様からの受注が日に日に増しています。

WAKAZE PARIS

三軒茶屋では、醸造所併設の直営飲食店がおかげさまで、10/2(土)にリニューアルオープンを迎えます。
三軒茶屋醸造所の創立期、未知の発酵に挑む私の気持ちを支え続けたのは、併設飲食店の食卓から溢れる笑顔や感動の表情でした。
そして、その隣に立って同じ目線を食卓に投げかけ共創するのは、心から信頼する料理人とサービススタッフ。

WAKAZE TOKYO

酒の造り手(Brewery)、食の創り手(Kitchen)、食卓(Table)。

この3者の関係が最小単位となり、ひとつ屋根の下で織りなすSAKEの価値循環こそが、WAKAZEがずっと三軒茶屋の地で向き合っているあり方です。
私が日本で学んだこととは、単純な酒造技術だけでなく、この「3者関係」による食の循環といえます。

そして、パリ郊外に立地するKURA GRAND PARISという醸造所にとって、「食の創り手(Kitchen)・食卓(Table)」とは、フランスの首都であり、世界の食の都である“パリそのもの”です。

距離感こそ三軒茶屋のような一つ屋根の下ではありませんが、意識はまったく同じ。
地産地消の関係性で、楽しんでくださる方の笑顔や感動その他のフィードバックすべてを、次のものづくりに活かし、高回転で技術を進化させていくこと。
それこそが、WAKAZEがずっと培ってきた重要な価値観です。

 

3. さらなる進化へ

私は創業と同時に酒造りの道に入り、委託醸造の商品開発をしながら3年間、日本の4つの酒蔵で修行をさせていただきました。
修行が終わると同時に、東京・パリと1年おきに酒蔵を立ち上げ、現在WAKAZEが自社醸造を始めてからちょうど3年間が経ち、「4年目」へと歩みを進めます。

つまり、私個人にとって、修行期間では経験しえなかったものづくりの時間軸へと入っていくことになります。すべてが未知です。

そして、それを一緒に楽しみ乗り越える仲間がいます。

私が日本で学んだ食の循環は、万国共通と信じています。
さらにいうならば、酒と食は主従関係でいうと、「食=主・酒=従」であると考えています。つまり、SAKEが豊かな食卓の選択肢として、従の位置より進化し突き上げることで、食そのものを次の次元にベースアップすることができると信じています。

「日本酒を世界酒に」、そして「日本酒の日を、世界酒の日に」。

目の前の食卓を豊かにしていくために、日本とフランスを繋いで未知のものづくりに引き続き挑戦していきます。

近い将来、世界中でSAKEが造られ、10月1日にはWorld Sake Dayとして乾杯される日を夢見て。

WAKAZE SAKE FOR EVERYONE


 
WAKAZE 今井翔也

Text by Shoya
今井翔也 / 取締役CTO・KURA GRAND PARIS杜氏
1988年生まれ。東京大学農学部卒業。食品EC企業オイシックス在籍中、代表稲川と出会いWAKAZE創業。秋田・新政酒造、富山・桝田酒造店、新潟・阿部酒造、群馬・聖酒造で蔵人として修行を積み、酒造りの知識と技術を横断的に会得。実家は1841年創業の群馬・聖酒造の酒造一家。三軒茶屋醸造所およびKURA GRAND PARIS初代杜氏。

TOPページに戻る