ボタニカルSAKEで広がる“素材”と“造り”の可能性
2021/07/13
こんにちは!WAKAZE広報のSakiです。
先週の7/9金に、三軒茶屋醸造所の最新作「三軒茶屋醸造所のどぶろく コーヒー(通称コーヒーどぶろく)」が発売となりました!
コーヒーの香りと、どぶろくのクリーミーさが重なり、さながら爽やかなカフェオレのよう......とっても美味しいんです。
LINEやSNS、公式オンラインストアで見てくれた方はお気づきと思いますが、前作までの水彩デザインの500mlボトルから一新し、本作からはデザインと容量を大きく変更しています。
今回のマガジンでは、三軒茶屋醸造所の目的からリブランディングの意図まで、三軒茶屋醸造所の杜氏(製造責任者)の戸田くんに聞いていきたいと思います!
1.可能性を広げる「三軒茶屋醸造所」
2.素材の奥深さを感じる720ml
3.新たなはじまりを象徴するラベルデザイン
1.可能性を広げる「三軒茶屋醸造所」
―戸田くんこんにちは!本日はよろしくお願いします~!
戸田くん:よろしくお願いします!
戸田 京介 (三軒茶屋醸造所 二代目杜氏)
2018年の三軒茶屋醸造所立ち上げ直後から蔵人として杜氏 今井翔也に弟子入り。木戸泉酒造(千葉県)と土田酒造(群馬県)にて修行し、伝統と自然製法に回帰しながらも革新的な酒造りを行う最前線に触れる。2020年4月より、三軒茶屋醸造所杜氏として指揮をとり、これまでに30を超える革新的なSAKEレシピを生み出してきた。
―今回のデザイン刷新にあたって、フランスにいるパリ醸造所 杜氏の翔也さん(取締役 今井翔也)や、琢磨さん(代表取締役 稲川琢磨)を含めて、クリエイティブエージェンシー「Our Friends」とたくさんの時間をかけて討論を重ねてたね!
戸田くん:そうですね、「Our Friends」はフランス パリ醸造所のリブランディングでも力を借りたところなので、WAKAZEへの理解は素地としてあったのはよかったです。ですが、フランスのパリ醸造所と、日本の三軒茶屋醸造所では、目指しているところが違うので、いちから三軒茶屋醸造所の目的を伝えましたね。(参照:ヨーロッパでの“出会い”と“言葉”で生まれ変わるSAKE)
―なるほど!たしかにフランスのデザインそのまま日本のお酒には使えないよね。今回のコーヒーのラベルが決まるまでも、時差の障壁を乗り越えながら何往復もやりとりしているのが印象的でした。
「三軒茶屋醸造所の目的」というキーワードがでたけど、具体的にはどういうことなんだろう?ありがたいことに、「いろんな素材を取り入れて面白いSAKEをつくっているところ」と思ってくれている方が多そう。
戸田くん:僕が三軒茶屋醸造所の目的として考えているのは、①素材の可能性を広げること、②造りの可能性を広げること、の2つです。この考えは、今回のデザイン刷新の根幹でもあります。
―素材の可能性は、確かに!この約3年のあいだで広げまくってきたね。
戸田くん:そうですね。多様な素材で多様な造りで、驚きと感動に溢れるSAKEが生まれてくるの、めっちゃ楽しいですよね。
僕らがやりたいのって、ボタニカルSAKEという新たなジャンルを確立することが目的ではないんです。
今の日本酒も、もちろん大事にしながら、SAKE文化の裾野を広げることで、持続可能な姿にしたいと考えています。さまざまなスタイルのお酒が許容されれば、さまざまな造り手が生まれる。逆に、造り手が増えないと、文化的に衰退してしまう。
―そもそもの日本酒文化への尊敬があるからこそ、そこを広げていくためにも多様な素材と造りを追求しているんだね。そこで生まれる多様性こそが、文化の盛り上げに繋がる。
戸田くん:日本酒のポテンシャルはもっとあると信じてるんです。新たな選択肢を提示していくことで、発酵や米のポテンシャルをもっと開いていきたい。だからこそ、ボタニカル素材と米を掛け合わせることでうまれる様々な製法には可能性があると感じています。
―なるほど!じゃあ三軒茶屋醸造所は、これからも多様な素材と多様な造りに挑戦していくのか。ワクワクする!
戸田くん:ただ、細かくいうと醸造所のスタンスは少し変わりつつあります。これまでは、誰も挑戦がしたことがなかった「SAKE×ボタニカル」に対して、たくさんのレシピ数を生み出して実験を繰り返してきました。いわばプロトタイプ(試験醸造)のような位置づけですね。
でも、3年間向き合うなかで、少しずつ知見が溜まってきたことも多く、過去に造った異なるレシピの知見が重なり、新たなSAKEを生み出すのに活きたりもしています。
―それまさに!FONIA salt ~French Hop~のときにも沢山起こっていたね。レシピひとつひとつの発見が、集約されて次のSAKEに活きるのめっちゃアツい!(参照:stand.FM「FONIA salt 〜French Hop〜の製造秘話を語ります!」)
戸田くん:なので、次の段階として、造ったお酒をより深く楽しんでもらえることで「SAKE×ボタニカル」の奥深さを体感してほしいんです。
2.素材の奥深さを感じる720ml
―これまでの500mlだと、飲みやすすぎてするする1本あいちゃってたよね笑
戸田くん:そうなんですよねー。少量を試してもらう意味ではいいのですが、500mlという量だと、1本のお酒に込めた多様な味わいも伝えきれなくて。
―ほんとそうなんだよね、例えばコーヒーどぶろく1つ例にとっても、実は温度で感じる香りや味わいに幅があるよね。
戸田くん:そこはまさに、製法の工夫とリンクしてきますね。今回のコーヒーどぶろくでは、コーヒーを2つの方法で醪に迎え入れました。
1つは、コーヒー豆を破砕してネットにいれて醪に浸漬する方法。この方法だと、その豆のもつ香りや酸味を取り出すことができます。この味わいは、冷やして飲んでもらった時に体感しやすいです。
―たしかに、冷やした状態で飲むと、口いっぱいにコーヒーのいい香りと、爽やかな酸味を感じる!すいすい飲めちゃう。
戸田くん:もうひとつの製法は、ドリップして醪にいれる方法ですね。コーヒー豆を熱湯で抽出して、急冷しています。そうするとで、コーヒー豆らしい焙煎感をだせます。この味わいは、逆に常温のときのほうが感じやすいですね。
―冷やしても常温でもそれぞれ美味しいなんて、まさにコーヒーという飲み物の魅力を表しているね!
1つの素材でも、“造り”で色々な角度から切り取って異なる魅力を引き出してるんだね。それがさらにSAKEとあわさることで、めっちゃおもしろい!飲むたびに発見があって楽しい...。
戸田くん:ありがとうございます。とはいえ、1本あたりの量を増やすにあたり無理なく美味しく飲み切ってもらうために、「もう一杯、と杯が進む飲み続けられる味わい」を強く意識して造りあげています。
―するする飲める味わいは夏向けかと思っていたけど、そういう意図もあったのね!720mlと容量1.5倍だけど価格はあんまり変わらないから、たくさん飲みたい私みたいな人は助かる!
3.新たなはじまりを象徴するラベルデザイン
―そう思うと、今回のデザインにも、これまでになく目立つ文字で「コーヒー」って書いてあるね。そこも素材への想いが強いからなのかな?
戸田くん:まさにそうです。今回のラベルでは色んな要素を盛り込んでいますが、よく見ると文字と文字が重なったり、スプレーが被ったりしています。さらによく見ると、素材名である「コーヒー」の文字が、WAKAZEの文字やスペック情報よりも最前面にきているのがわかると思います。
これは、スペックに目を向けて頭で楽しむより前に、「まずはコーヒーのSAKEの美味しさを味わってくれ!!」という想いを込めました。
―たしかに、ついつい裏ラベル見てからお酒飲んじゃいがち。。。
戸田くん:その楽しみ方も、造り手としてはうれしいんですけどね。もっと、難しいことも考えずにまずは美味しく味わってほしいんです。
素材名と並んで、朱色で最前面にきているのが「和風/若勢」と「製品番号」です。これは、WAKAZEとしての自信をもって送り出す「出荷印」という想いを込めてます。「完成!OK!出荷!」みたいな笑
―かすれた感じの朱色には「和」を感じていたけど、そう見ると、勢いを感じる...!
戸田くん:まず素材の味わい、そして製法、そのうえで裏ラベル情報。と順番に目を向けながら飲んだもらえたら嬉しいですね。
―お!たしかに、ラベルの中の文字の重なりが手前からその順番になってるね!
あと、この裏ラベルに被るスプレーも斬新だな~と思った!いままでWAKAZEのお酒では、ハンコとかゴシック体の文字とか、水彩がでてくることはあったけど、スプレーってがらっとイメージ変わる。
戸田くん:いい着眼点です!さきさんさすが!笑
スプレーは、気に入っているポイントでもあります。パリ醸造所の翔也さんは、「これまでの日本酒が、奥深い水墨画の世界だとしたら、ボタニカルSAKEは彩を手に入れた水彩画。どちらがいいとかではなく、日本酒とボタニカルSAKEの両方に向き合ってそう実感している」とよく話をしていますが、まさにそこです。
お米の白い土壌に、素材の色を重ねる最初のひとふでを表しています。
―お米の白い土壌に色を重ねる最初のひとふで...!
戸田くん:このスプレーは裏ラベルに被せる意図もありますし、白い余白が引き立たせています。また、スプレーなので、次の色を重ねてくれる新たなプレイヤーを待っている、というメッセ―ジもあります。
―WAKAZEが目指したいのは、世界中でSAKEが造られ、飲まれる世界。造り手を増やすことで飲み手も増える。というメッセージとまさに一致しているね。
戸田くん:その世界の実現には、「素材の可能性を広げること」と「製法の可能性を広げること」が欠かせないので、ラベルの中でも大きく記載しています。
―な、なるほど...!すべてのメッセージは繋がっているんだね。戸田くん熱い話をありがとう!
「世界中で酒が造られ、飲まれる世界」の実現に向けた戸田くんの熱い想いを聞くことができました!(インタビュアー側もワクワクしました!)
こだわりがたくさん詰まった三軒茶屋醸造所のお酒。リブランディングから一作目の「三軒茶屋醸造所のどぶろく コーヒー」には、特に強い思い入れがありそうです。
容量がUPしてお得になったどぶろく、1本をいろんな楽しみ方でぜひ試してみてくださいね!
Text by Saki
東京都出身。幼いころより生き物に囲まれて育ち、生命の奥深さに魅了されバイオテクノロジー系の大学に進む。理系資格を活かし医療機器メーカーに入社したものの「好きなものを支え伝えたい」と一念発起し、2019年2月WAKAZEにJoin。広報、SNS、コンテンツ、営業などを担う。誰よりWAKAZEのお酒が好き。
Twitter:@saki_wkz